7月31日の日記「柔道一直線」

万博開催の効果でしょうか、いろいろな国から来たと思われる人たちの姿を街中でみかけるようになりました。愛知県では各地で街をあげて参加国の人たちと交流を深めるイベントが開かれ、その様子が連日テレビや新聞で報道されています。

そんな折、ウチの街でもゲストにアテネオリンピック金メダリストの谷本歩実選手を招いて、姉妹都市からやってきた柔道選手と地元の選手との親善試合が開かれることになりました。

地元でこれほどの大会が開かれるとは、さすが万博効果と感心すると同時に、このイベントのポスターを見た瞬間、長らく眠っていた熱い何かが体の中心からよみがえって来るのを感じました。

今でこそいい年をして親子ウサギの妙なシールとか作っては喜んでいる僕ですが、小学校2年から6年まで柔道教室に通い、中学3年の時には「選手が足らないから」と同じクラスの柔道部員に頼まれていきなり対抗戦に出場し、本当に同学年なのかと疑問を感じずにはいられない120キロはあろうかという相手選手に押さえ込みで敗れた経験を持つ柔道少年だったのです。

しかもこの親善試合の前には女子柔道のソウル五輪の銅メダリストであり日本選手権10連覇の山口香選手やアトランタの銀メダリスト溝口紀子選手が子どもたちに柔道の楽しさを教える「キッズ柔道教室」が開催されるとのこと。

参加費は無料。参加資格は3歳から。
ひなさん、参加できるじゃないか!

柔道! どうして今まで気がつかなかったんだろう。ひなさんの心の自立を促し、強い幼児にするためにはこれほど適した競技があるでしょうか(自分自身が「ウサギ描き」の大人になっってしまったという実績はさておき)。このチャンスを逃してはいけない!

いくぞ、ひなさん! 
男の子ならやっぱり柔道だな!
(指導するのは女子選手だよ)

こうして即決で参加希望FAXを送りました。たまたま前日の夜にケーブルテレビで放映されていた昔の仮面ライダーの中に、主人公が空手着姿で敵をやっつけるシーンがあり、「ほら、このかっこいい服を着て『ヤー! ヤー!』って戦いにいくよ、明日」と、焚きつけておいたので、

「ひなくん、ヤー! ヤー!ってたたかう!」

と、ひなさんの心の準備も万端です。でもテレビで見たのは空手だからな。ほかの子どもに殴る蹴るの暴行を働いてしまったらどうしようという心配には目をつぶり、いよいよ当日を迎えたのでした。


柔道着は無料で貸してもらえました

会場となっている体育館は世界的な選手たちを迎え入れるにふさわしい見事な柔道場となっていました。真新しい青畳の香り。そしてわが子を指導するのはアテネオリンピックで日本をメダルラッシュに導いた全日本強化コーチでもある山口選手です。なんと贅沢な柔道デビューなのでしょうか。


山口選手と溝口選手

教室は全体のプログラムを山口選手が進行し、年齢別に分けたグループのそれぞれに大学の女子選手がついて細かな指導にあたります。この日の参加した子どもは約100人。ひなさんと同じ3歳の子どもも意外にたくさんいます。

挨拶と準備運動のあと、いよいよ実技の指導です。もちろんいきなり投げ技ができるわけがなく、まずは寝技から。


マウントポジションから


おさえこみ〜


・・・・


押さえ込むほうも
押さえ込まれる方も
やる気がないね


初心者対象ということでゆるゆると進められていく教室。しかし、そもそも柔道というものすら知らない子どもたちばかりの低年齢グループが無法地帯と化すまでにはそれほど時間はかかりませんでした。着慣れない柔道着はどんどん乱れ、それを先生が直していくことも人数が多くてままなりません。


率先して新体操を始めるウチの子

ひなさんのように、解けた帯を手に持って走り回る子どもが増えてきたのを見た山口選手「ようし! じゃあみんな帯をとって、縄跳びをしよう!」と、急遽、年齢別縄跳びリレー大会をはじめてしまいました。柔道が楽しいものであるという印象を参加者にもってもらうことが、このイベントの目標なのでしょう。こうして柔道の底辺が広がり、日本のお家芸躍進の礎となっていくと考えれば、それもまたヨシです。

こうして畳敷き和風プレイルームでの楽しいお遊びの終わりが近づいてきました。

「じゃあ、最後に投げ技をかけてみようか!」
と、山口選手。希望者を募って、アシスタント役の学生選手たちが投げられてくれるとのことです。

「投げてみたい人、手をあげて!」


「ハイ!」「ハイ!」ほとんどの子どもたちが元気な声で手を上げています。うちの子はというと・・・隅っこの方で、小さく手を上げています。ああ、やっぱり弱いなあ。
声の大きかった子どもたちが5人ほどが選ばれ次々に投げ技を体験。きれいに弧を描いて投げられてくれる学生選手たちに、選ばれし子どもたちはみな誇らし気です。

「じゃあ、ほかにもやりたい子は?」 

またもや、あげる手が小さく選んでもらえないひなさん。

「これで最後にしましょう!」

2順目の子どもたちの試技の後、山口選手が教室の終わりを宣言します。ひなさん結局投げ技できなそうだね。

ところがここで柔道の神様が奇跡をおこします。

「じゃあ、最後にもう一人だけ! 投げてみたい人!!」


「はぁあああい!!」

わあ、びっくりした!
会場中に響く、誰よりも大きな声の主は、なんとウチの長男じゃないですか!

「じゃあそこのキミ!」
山口選手に導かれ人垣の後ろから柔道場の中央に歩をすすめたひなさんは、参加したすべての子ども、見物の保護者、大会関係者、そして五輪メダリストの見守る中、見事に必殺の背負い投げを披露したのでした。



ヤーッ!

教室終了後、山口選手から免許皆伝(参加証とも言う)をいただいたひなさん。
ほんの半月ほど前の七夕祭りでふにゃふにゃになっていたひなさんが、確実に一つ成長した瞬間を目撃することができたような気がします。

 


免許皆伝

ありがとう、山口選手。ありがとう柔道。このご恩はロンドンの次のオリンピックでひなさんが金メダルをとることでお返しします(多分ムリ)。

それにしても100人の参加者の中には、ウチのマンションの子どもたちも結構きていました。このまま皆が柔道に目覚めてしまったら、10年後には男子柔道部員がたくさんいるマンションになってしまうのでしょうか。いやだなあ。


男子柔道部員


 

          

 

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