10月14日の日記「さらださん」

きっかけは7月のはじめ頃、職場のパソコンに届いた一通のメール。
その文末には次のような近況の報告がつづられていました。

 

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赤さんには、すごく気持ちが伝わっているような気がします。実は「胎名」なるものをつけていまして、呼ぶと動き出したり、ポコポコ中と外から叩き合ったりして遊べるんです。すごく可愛い。

お腹にいるのは、まぎれもなく「人間」なんだと実感します。最初はおたまじゃくしみたいだったけど・・。

ちなみに胎名は“さらだ”さんです。妊娠してサラダが異常に食べたくなったので、3ヵ月くらいにつけました。さらださん、夜の10時くらいが一番元気です。

……………

 

メールの送り主は職場の同僚のひとりで、はじめての赤ちゃん「さらださん」をご懐妊中の若い女性。

このメールをきっかけとして、彼女はそれからも毎日のように、彼女自身とさらださんの近況や心の動きを綴られたメールを、「プレマム日記」と題して送ってくれるようになりました。そして、その日記に返事を書くのが僕にとっても日課となり、それは8月末に彼女が産休に入るまで続いたのです。

以下、彼女のお許しを得てその一部をご紹介します。

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プレマム日記   7月20日
最近つめがいい具合で伸びてきたので久しぶりにマニキュアを塗って楽しくなっていたのですが…。昨日料理中に包丁が当たってマニキュアが欠けてしまいました。よく見ると所々剥がれてる。これってまずいかも!

こんな危険なものを知らずに食べてしまったらさらださんに害が及ぶぞ!
 

…冷や汗をかきました。ダメな私です。
すぐにマニキュアを落とし、爪を切りました。まん丸になった私の爪が再び伸びるのはいったい何年後になることでしょう。
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RE:プレマム日記
みきさんなら、マニキュアが料理の中に剥がれ落ちてもあまり気にしないような気がします。食い物関係には実におおらかな彼女のことですから。でも、一応小さな子どものいる家庭なのですから賞味期限くらいはチェックして欲しいと思う夫さんです。母親になったらいろいろな事に気を配らなければいけないのは当然としても、みんながみきさんくらい無頓着な人であれば世の中のママさんたちの悩みは随分軽くなるのだろうなあと思います。


プレマム日記   8月3日
私は前からさらだサンの胎動がよーく伝わるので、さらだサンは人一倍元気なお子さんだと思っていたのですが、先生に聞いてみたら「痩せていて皮下脂肪が少ないとよく分かるんだよ。」と言われました。そうか、壁が薄いんだ。じゃあ私のいい加減な音程の歌なんて聞いちゃいられないんだろうなぁ。旦那さんに歌ってもらおうっと。(やたら高音だけどね)
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RE:プレマム日記
子どもは歌が好きですね。
一昨日も、ひなさんと航ちゃんに車の中で「エキゾチックジャパン」をそこはかとなく郷ひろみの声でフルコーラス歌ってあげたら二人とも大変喜んでくれました。 
ジャパ〜ン!
多分、胎児さんも歌が好きだと思います。せっかく音響効果のよさそうな胎内にいるのですから、たくさん歌ってあげてくださいね。
ジャパ〜ン!


プレマム日記   8月16日
最近顔をじっと見られちゃぁ、「赤さん男の子だねぇ」と言われます。丸い顔になってきたから顔つきが変わったのでしょうか?化粧を手抜きしているからでしょうか?(これ本当)
明日また病院でエコーを見ます。久しぶりのエコーで大きくなったさらださんが見れるので今から楽しみです。
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RE:プレマム日記
顔見ただけで「男の子だね」って言う人は何を根拠にしているのかというと、結局、なんとなくそう思うという、霊感、ヤマ勘、第六感でしかないのですね。

〔今日の名言〕
妊婦の前で人は皆、予言者である



プレマム日記   8月23日
だらささん(逆子だから)の位置を元通りにするため「逆子体操」なるものにチャレンジしてみました。“体操”という響きから、てっきり緩く体を動かすものだと思っていた私。でも実際は猫が伸びをしてるような姿勢を5〜10分とり続けるという、妊婦にはかなりハードな“逆子矯正ポーズ”だったのです。
猫のポーズはお腹が一番緩んで、赤さんがクルリンッと動きやすいのだそうです。しかしいったいいつ動いてくれるのやら・・ 実に「待ち」ひたすらに「待ち」です。
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RE:プレマム日記
逆子のだらちゃん。
ふだん狭い場所に挟まっているのですから、逆子体操はさぞや開放感があることでしょう。それとも、支えてるものがなくなって
「おちる、おちる〜!」
とか思ってるのでしょうか?
落とされたくなかったら一刻も早く、定められたポジションに戻っていただきたいものです。


プレマム日記   8月23日
昨日とうとう洗面台での洗顔ができなくなりました。お腹がつっかえてかがめないのです。困ったもんだ。
だらささんの位置が私には“真横”になってるのような気がして、「いやいや、そんなのまずいでしょ!」となんとか表面から位置を探る毎日です。
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RE:プレマム日記
真横? 
真横ってさらださんが胎内で横たわってるってこと? 逆子だから違うか。
じゃ、わき腹の辺りにいるってことかい。駄目だろ、わき腹は。気をつけの姿勢ができなくなってしまうよ、ママが。
その後のだらちゃんの様子はいかがですか? だらちゃんだって時には機嫌が悪い日もありますよね。早く仲直りしてくださいね。ってケンカしてた訳じゃないか。
プレマム日記   7月23日

う〜ん
右手の親指の付け根あたりが痛いよ〜。
どうやら原因は体重を支え過ぎたため。妊娠してからお腹に力を入れないように入れないように腕の力で起き上がったり立ち上がったりしていたため、ついに一番使っていたであろう右手を痛めてしまいました。「そんなに気ぃ使わなくても・・」と思うでしょうが、赤さんて羊水の中でプカプカ浮いているんじゃないのです(私も浮かんでるもんだと思っていたのですが)。実際エコーで確認したらすんごく狭い所にはさまっているんです。狭っ! そんなさらださんの姿を見たら、お腹に力入れられない!
手も痛いし、肩も凝るし、妊婦はガタガタです。

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RE:プレマム日記
赤さんって羊水に浮かんでるんじゃないんだ!
一児の親でありながらはじめて知りました。ひなさん、そんな狭いところに1年近く挟まってたんだねえと思うと、いとおしくなりますね。自分自身も挟まってたんだろうけど。
ところで「狭い」と「挟まる」てよく似た字だね! 今気がついた。


プレマム日記   8月10日
昨日夜中にこむら返りをおこして一気に目が覚めてしまいました。しかも両足いっぺんに。もう両足じゃどうにもならないです。地獄です。夜中、旦那に「助けて〜!」と半泣きで叫びました。
ところでさらださんは、お腹の中でよく“う〜ん”と伸びているようですが、ツラないんですかね。ツラないんでしょうね。お腹の外では母さんがこの上なく苦しんでるのですが。
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RE:プレマム日記
傍らにいる伴侶に助けを求めたところで実は何の解決にもならない足のツリですが、生れ落ちてから今までひなさんの足がツったところを見たことがないので、子どもはツラないんじゃないかなあ? なにしろやつらの肉は柔らかいですから。ツルような筋もなさそうだし。
でも、実はお腹の中では結構いろんなことが起こっているのかもしれませんがね。人知れず足がツッた痛みに耐えていたり、深夜に不意に金縛りにあっていたり、お母さんの食べたアイスが冷たくて頭がキーンってなってたり。
さらださんが2歳くらいになって言葉がしゃべれるようになったら、胎児の時の記憶を忘れずに聞いていただきたいものです。


プレマム日記   8月20日
毎日夜寝る前は、さらださんとのお話の時間です。最近はよく“伸び”をするので伸びたときに声をかけて伸びてきた小さな手をさすってあげています。(お腹の左側から右横腹に小さな“グー”が出てくる)

さらだ:“にゅーん”(伸びてる)
ひでこ:「あっ、伸びてるねぇ」

さらだ:“にゅーん”(また伸びてる)
ひでこ:「伸びた、伸びた。元気いいねぇ」

さらだ:“にゅーん”(さらに伸びてる)
ひでこ:「よく伸びるねぇ、気持ちいいねぇ」

こういうときの抑揚のついた高い声の話し方を“マザリ−ズ”と言います。生まれてきた赤さんはこの話し方に顕著に反応を示します。赤さんにとっては安心のできる気持ちのいい話し方なんだそうです。おばさんが小さい子に話す話し方はそれが残っているからだそうです。大人が聞いてるとたまに気持ち悪いんですがね。

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RE:プレマム日記
例の独特のママしゃべり。マザリーズって言うんだ。初めて知りました。妊婦界ではスタンダードな言葉なのかな?
でも、あのしゃべり方は胎児だけでなく、幼児の言葉の発達にもよい影響があると聞いたことがあります。なるほど、ウチの母親もみきさんちのお母さんも女兄弟が多いせいで、常におばさんに囲まれているからひなさんはうるさいくらいやたらとよくしゃべるのかもしれません。
まあ、育児法にはいろんな学説があって、どれを信じたらいいのかわからなくなることもありますが、さらださんも何だか大喜びでにゅーん♪ にゅーん♪ してるみたいですし、何よりです。



プレマム日記   8月30日
金曜は暇だったので、だらささん用のぬいぐるみを作ってみました。裁縫は下手の横好きを地で行く私です。“下手の長糸”もあてはまります。2時間くらいかけて完成したぬいぐるみには、もう既に“味”が出てしまっている状態・・・。旦那にも味出てると笑われました。でも裁縫できない旦那には、この代物がいかにひどい出来かまでは分からなかったようです。よかった。
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RE:プレマム日記
だらささん縫いぐるみ作ってもらったんだ。
いいなあ、味のあるぬいぐるみ。クマかな? イヌかな? 人かな? 子どものことなので、丁寧には扱ってはくれないでしょうが、だらちゃんにとってはこの上ない宝物になるでしょう。
素人考えで科学的根拠は全くないけど
、お母さんが何かモノつくってるっていうのは、お腹の中の子どもにとっては、すごくよい刺激になるような気がします。恵まれてよるな、だらちゃん。

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はじめての出産を迎える喜びや、不安や戸惑いも、すべてが素直に語られたこれらの日記が届くたびに、今から3年前のひなさんの誕生を待っていたころの事が新鮮に思い起こされます。僕とみきさんは、彼女のようにあれこれと深く考えることもなく、ひなさん誕生の日を迎えたよなあ。ウチだって初めての子どもだったというのに。

そして、最後のプレマム日記が届いてから、約1か月半。

勘の良い方はもう「ははあ」とお気づきだと思います。
「ぼくこども」の名付け親、ひでちゃんが10月14日の早朝、2386グラムの元気な男の子を無事に出産しました。


おめでとう!
キミがさらださんだったんだね。

 

10月14日と言えば、このサイトの常連さんであるKさんとべるさんも揃って男の子を出産されました。めでたさ3倍、遠距離三つ子の誕生です! この日は、何年かぶりの日蝕があったそうですが、何かの運命に導かれた男の子たちなのかもしれません。だったら凄いな。

ともあれ、ひでちゃんもついにお母さんになりました。これからどんなスタイリッシュでおしゃれな子育てを始めていくのか、とても楽しみです。





「プレマム日記」完全版はこちらへ  →  クリック!

 

(おまけ)
初めて会うさらださんの顔を、飽きもせずにずっと眺めていたら、泣いたときに顔の真ん中にイセエビが出現することに気がついてしまいました。

 
イセエビ


これはまた、将来が本当に楽しみな、実におめでたい赤ちゃんの誕生です。

 

 

          

 

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