3月3日の日記「ルージュのゲルニカ」

先々週の扁桃炎からくる急な発熱は、その頑張りによって一日で収まったひなさんでしたが、その後も寝ているときのいびきが大きく、寝苦しそうにしていることもあって、再度耳鼻科に診療に行くことにしました。

が、診断の結果は特に問題がないとのこと。鼻は確かにつまっているけど、もともと扁桃腺が大きいのでいびきをかきやすいとのお言葉をいただきました。そうか、ひなさん大変な宿命を背負ってしまったものだねえ。でも、とりあえず心配すべき病状ではなく快方に向かっているようだし、インフルエンザも全国的に峠を越えたようなので、安堵する僕たちではありました。

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ところが、日曜日の深夜のこと、今度は僕の体に変調が起きました。なにしろひどい悪寒で眠れません。布団と毛布にくるまって、ひなさんを湯たんぽ代わりにしても寒い(注:体調が悪いときはわが子を湯たんぽにするのはやめましょう)。とにかく朝になれば何とかなるだろうと無理に眠ってみたものの、月曜日の朝になっても症状は回復していませんでした。

耳で測る体温計で図ってみたら37度ちょっとの微熱のみ。こんなはずはないともう一度図ってみると今度は「エラー」。もういい。微熱ってことにして無理に職場には行ったものの、もうどうしようもなく辛くなってきたので、最低限やっておかなければいけないことをすませて、早々に家に帰らせてもらいました。

で、帰宅後今度は脇の下で測る体温計で測ってみたら39度2分。たった1秒で計測できるなんて、どうも信用できないと思ってたんだあの耳体温計。このころには喉も痛くなってきたので、風邪薬のんで寝ていましたら、「インフルエンザだといけないから病院いってらっしゃい」と言うみきさんに鼻に綿棒さされるのはいやぁ、と一応抵抗はしてみたものの、家族に感染を広めてはいけない、職場にも迷惑をかけると、みきさんがいちいちもっともな事を言うので仕方なく覚悟を決めることにしました。

ひとり車を走らせて、ひなさんを何度か見てもらった一番近所の内科医へ。診察するのはいかにもベテランのお医者さん。症状を聞かれたので「発熱が38〜9度と喉が痛いです」と答えると「扁桃炎だね」、ってもう結論ですか、先生! 鼻綿棒は? 「がんばれ、がんばれ」は?「はい口あけて、ああ腫れてるねえ」やっぱり間違いないようです。さすがはベテラン、診療完了までの所要時間3分。その後点滴打って、薬もらって帰宅しました。

扁桃炎ってことはやはり、感染源はひなさんなのだな。体中こんなに辛いのによく乗り切ったものです。そして、よく1日で元気になったものです。小さいクセに尊敬するよ

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僕はといえば、大きいクセに1日では回復せずに翌日も欠勤。今日は一日一緒にいられる思ったのか、ひなさんは大喜びで絵本やブロックをもって遊びに来ます。病気だからごめんねと、そのたびに謝ってみてもひなさんには理解できません。それどころか、ちっとも期待したほど相手をしてくれない事に次第に不満を蓄積させていたようです。そして、みきさんが買い物に行っている間、僕がほんの少しのうたた寝している隙に事件は起こりました。

 

 
ルージュの伝言

おじいちゃんに買っってもらったばかりのジャングルジムに、みきさんの口紅で彩色アートが施されておりました。滑り台の部分全面から格子の部分まで、まんべんなく、それはもう鮮やかに。遊んでくれないダーリンをママに言いつけて叱ってもらおうとしたのでしょうか。誰がダーリンじゃい。とんだルージュの伝言です。

それにしても、ジャングルジムはくまなく口紅が塗りたくられているのに、壁や床はもちろん、着ている服や手足にもまったく汚れがついておらず、使い終わった口紅のキャップもしっかり閉じられていたところに、単なる子どもの失敗ではない、ひなさんの強い意志のようなものを感じます。

かつて、画家パブロ・ピカソがドイツ軍の空爆にスペインの小さな町が蹂躙されたことへの怒りから名作「ゲルニカ」を完成させたように、2004年、ひなさんは遊んでもらえると思ったのに構って貰えなかったことへの憤りから、ジャングルジムを前衛アート作品のキャンバスに仕立て上げたのです。

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実際はそんなことに感動している余裕などあるはずがなく、やるせない気持ちを心に抱きつつ、病身に鞭打つようにウエットティッシュでジャングルジムをきれいにする羽目になったのでした。ひなさんの芸術作品の生命は、流星の瞬きのようなほんの一瞬の儚いものでした。てゆうか、永遠に残るような作品でなくて本当によかったです。

で、その後の僕の扁桃炎はどうなったかというと、こんな風にサイトの更新をしているということでお分かりですね。ただ一つ、お医者さんに扁桃腺が大きい言われたことを病院から帰宅した後に告げたら、「ひなさんと一緒で、いびきかくもんね」と、これまであまり気にしていなかった事実をみきさんに指摘されたのが、少々ショックではありましたが。

 

 

          

 

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