続12月13日の日記「ひでちゃん2」

若い2人の門出を祝うような快晴のもと、いよいよひでちゃんの結婚式が始まろうとしていました。早めに会場入りして、レストランで朝食をとり、ひなさんの心(ゴキゲン)と体(腹へり)のコンディションを整えます。今日は出がけにウ○チを済ませてくれたので、大きな心配がひとつ解消しています。よしよし、その調子だ。このまま何事もしでかさずに式を終えることができますように。

が、式場に到着するなり、奇声をあげて靴が脱げる勢いでロビーを走り出すわが子の姿に再び不安が湧き上がってきます。そしてその不安は例によってきっちり的中することになるのです。

*     *     *

チャペルでは何か事が起きてもすぐに対処できるように一番後ろの席をキープ。やがて賛美歌にとともに、新郎、そして新婦が入場してきました。

夫婦としてともに生きていくことを誓う二人。心洗われるようなセレモニーは、優しそうな神父さんの導きで、粛々と進められていきます。しかし、その静けさを打ち破る声。

ひなた:「あいちゃんは?」

・・・来たっ!
小さな声で静かにするように言い聞かせても魔の2歳児に聞く耳はありません。やがて、みきさんのバッグの中からおやつのラムネを目ざとく発見。袋を開けろとせがむのを無視していると、自分で無理やり開けようとする幼児。

ガサッ ガサガサッ!

チャペルに響き渡る乾いたビニールの音。ピンチ! 慌ててラムネの袋を取り上げたら、そりゃ叫ぶよな、幼児ってヤツは。

ひなた:「ああぁあん!」 

時あたかも、誓いの言葉を交わしている真っ最中。
一番後ろの席なので、親族のみなさんの表情はわかりませんが、一人ひとりの背中からイライラしたオーラが漂ってきます。僕たちだってこれがよその子だったら、殺意にも似た感情を抱く場面です。でも、当事者は他ならぬわが子。会場外に連れ出そうにも、出入り口は後方1か所の大きな扉だけ。とりあえず、ラムネを袋ごと与えたらなんとか落ち着きを取り戻してくれましたが、いつまた機嫌が悪くなるか予想もつきません。

身体中からは嫌な汗が湧いてきます。もはや、二人の幸福を祈る余裕などありません。
神様、どうかこの子がこれ以上騒ぎませんように!

こうしていたたまれない空気の中、結婚式は終わりました。
怖くてご両家のご親族のみなさんとは目を合わせることができないまま、披露宴会場へ移動します。ひでちゃんからは、結婚報告を兼ねた年賀状のデザインを頼まれています。気を取り直して、張り切っていい写真を撮らなければいけません。

*     *     *

会場の入り口ではたった今、式を終えたばかりの2人がお出迎え。教会では余裕はなかったので、カメラを構えながら初めてひでちゃんの花嫁姿をじっくり眺めることになったのですが・・・。

 

 

 

 
ちくしょう、かわいいなあ。

 

披露宴はひでちゃんの予告どおり、気負いがなく爽やかで好感のもてる構成です。BGMもひでちゃんらしくおしゃれな選曲で次にどんな曲が流れるのかが楽しみになります。

ところが、そんなことはお構いなしに用意してもらったお子様用の食事をガツガツを食いまくるうちの子ども(と、食べさせるフリして、子どもの食事をいちいち味見するうちの嫁)


親の心子知らずとはこのことだね。

でも、教会とは違ってここなら、多少騒いでもそんなに人に迷惑をかけないから安心だねなどと思っていたら、ひなさんテーブルの真ん中にある料理を食べようと、手を伸ばした先にあったオレンジジュースを思い切りテーブルの上にぶちまけました。

それだけならまだしも、こぼれたジュースが僕のカメラを直撃!

 

  あああああ! ひでちゃんの写真があ!
 年賀状があぁぁぁ!
   テーブルがああ! 
ああああぁあ!
ジュースがああ。 
うわぁあああ!
  ホームページのネタがぁあ!
デジカメがぁあああ!
あああぅああう!

その一瞬のうちに、僕は生まれて初めて走馬灯というものを見ました。
正気に戻ってカメラを確認したのですが、電源部分にジュースが流れ込みショートしてしまったのか、撮影不能の状態になっていました。

前にも同じ症状になったことがある。濡れた部分が乾けば再び撮影可能になるはず。でもそれまでの間どうする。ひでちゃんに年賀状つくるって約束したじゃないか。僕は式場を飛び出し、コンビニエンスストアを探し、そこで、一番高い使いきりカメラを買い、再び会場に戻ると、ちょうど新郎新婦はお色直しのために中座しているところでした。

デジカメのようにバシバシ撮ることができないので不安ではありますが、ギリギリ記録係としての仕事をすることができるかもしれない。安堵しながら念のため壊れたカメラのスイッチを入れると、キュイイインとレンズが出てきて、なんだよもう直ったのかよ。いや、直ってよかったです。

そうこうしている間に、お色直しを終えた新郎新婦の再登場です。

*     *     *

 


ちくしょう、黒もいいなあ。

おなかいっぱいになったひなさんは会場の周りで意味もなくはしゃいでいますが、もうどうでもいいや。式は相変わらずスマートに、そしてスタイリッシュに進行し、やがてフィナーレの時が近づいてきました。

最後に新郎が新婦に歌をプレゼントするという、それまでのおしゃれな式の流れの中で異彩を放つアトラクションがあったのですが、これはひでちゃんの企画だったのでしょうか。ちょっぴり謎。


熱唱する新郎
(キーの高さが印象的でした)

*     *     *

こうして、ひでちゃんにとっても、僕たちにとっても(いろんな意味で)忘れられない思い出に残る1日が終わりました。帰り道でひでちゃんに式の間ひなさんが騒いでたことを謝るメールを送っておきました。すると、しばらくして

「式の間、ひなさんの声でいちいち緊張がほぐれました。呼んでよかったゲストナンバーワンです」

と返事が来ました。ひでちゃんは本当にやさしいなあ。
ちなみに後日聞いた話によると、新郎は教会で騒いでいるひなさんの声を聞いて、自分の親族の中にいた幼児が騒いでいるのだと勘違いして、身体中から嫌な汗を流していたのだそうです。趣味や星座や血液型が同じということもあって、だんだん新郎くんが他人とは思えなくなってきましたよ。

がんばれ、後輩。これからは、ひでちゃんの夫になったキミを応援することにしますから、ときどきはふたりでひなさんと遊んでやってくださいね。

 

 

 

          

 

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