9月29日の日記「芸術の秋」

きっかけは、ひでちゃんから届いた一通のメールでした。

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ひでこ「美の巨人たち」風解説

マグリッド展に行ってきました。
身重の友達と行ってきたので、
早めに見なくては思っていたのですが、
あまりに絵が素晴らしいので、
しばらく絵の前から動けない状態でした。

マグリッドは、気違いです。
しかし、彼の絵に狂いはありません。
直線も、曲線も、色も何もかも
本物と寸分違わず描いてありました。

気持ち悪いほどの「本物の質感」で、
気持ち悪いほどの「本物の透明感」です。

私がマグリッドの空に憧れて描いた青は
絵の具から出した色で、
マグリッドのそれは、空から直接筆を運んだ
「本物の空」でした。


息ができません。息をする神経すら
視力にあてがわないと、彼の絵は見逃してしまいます。
なぜなら、現実と何一つ変わらなく描かれているからです。

ただ1つマグリッドの絵に描かれていないもの、
それは「塵」です。
美しすぎる現実は、夢の中の世界のよう。

彼は、本物の人物を、物を、空をいい加減に配置し、
いいかげんにタイトルをつけたのです。

以上ナレーターは杉本哲太でした。

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「美の巨人たち」(テレビ東京)のナレーターは杉本哲太ではなく小林薫なのですが、そんなことはどうでもよろしい。とにかくこの情熱あふれる解説文が久しく眠っていた僕の芸術家魂(アーティストスピリッツと読んでくれ!)に火をつけました。
ようし! ひなくん、僕らも行くぞ、マグリット展へ!


生まれて初めて電車にのって

美術館へGO!

と張り切ってみたものの、美術館に赤子を連れて行くのは少し心配でした。でもお調子者とはいえひなくんは、外出先で大声を出したりすることはほとんどありませんし、たとえ少々騒いだとしてもほとぼりが冷めるまでトイレやロビーに退避していればいいや、と楽観的にかまえておりました。

が、しかし。ひなくん展示室に入るなり、
「アー」と一声。
その声が、高い天井に反響してエコーがかかったようになったのが、ひなくん妙に気に入ってしまい、それからずーっと「アー! アー! アー!」と、叫びっぱなし。他の来館者の視線が痛い。

それよりも気になるのが、美術関係にはとんと疎いみきさん。ひとつひとつの作品の感想を実に素朴な、というか素朴すぎる言葉で述べてまわります。
「うわぁ! この人、空を描くのが好きなんだねぇ!」
いや、確かにマグリットには、青空をモチーフにした作品が多いけど、あんたもひでちゃんの解説文読んだんだからもっと、表現の仕方を考えてください。


みき:
「わあ、額縁が立体的。手でつかめそう!」

ひな:
「アー! アー! アー!」

みき:
「このグラス本当に透き通ってるみたい!」
ひな:
「アー! アー! アー!」

みき:
「わあ! 上は昼なのに下は夜だ!」
ひな:
「アー! アー! アー!」

ああ。他の来館者の視線が本当に痛いよ。
今度美術鑑賞するときは一人で行くか、もう少しひなくんが大きくなってからにしようと思います。

 

 

          

 

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